さくらサイエンスプログラムの支援を受け、2023年2月8日から28日までの3週間、B.共同研究活動コース「農薬曝露と子どもの健康に関する国際共同研究推進」として、マレーシア大学サバ校医学健康科学研究院のZulkhairul Naim Bin Sidek Ahmad博士(Naim博士)を招へいし、実施しました。Naim博士は、マレーシアにおける環境、特に農薬による環境と健康の問題に関心が高く、基礎調査を実施した経験がありました。そこで、このプログラムでは、環境と子どもの健康に関する出生コーホート研究を推進している北海道大学環境健康科学研究教育センターと共同で、塩素系農薬の胎児期曝露と子どもの健康に関する蓄積データを用いた解析を進めることで、経験を積み、マレーシアでこの領域の研究を促進し、継続的な研究や交流を促進することを目的としました。
常夏のマレーシアサバ州から来札したNaim博士は、雪が積もる中、初日は宿泊施設から研究室まで30分かけて徒歩で来たと話していましたが、次第に雪上の歩行にも慣れ、翌週には20分で来られるようになったと楽しんでいました。
研究室では、蓄積したデータの整理、クリーニングに始まり、招へい期間中に集計データをまとめることができました。また、招へい期間中には、出生コーホート研究における対面調査の見学、研究事務局の見学を通じて、実際の研究運営や参加者の母児とのコミュニケーションの方法などはとても参考になったようで、日本語資料にもかかわらず、たくさんの研究関連資料を持ち帰ることになりました。
滞在中は研究以外にも取り組まれました。2月9日と10日は学内で開催されたHaze workshopに参加して環境と研究に関する様々な課題に接するとともに、思いもかけずNaim博士の母国であるマレーシアの環境研究に従事する研究者ともコミュニケーションができ、マレーシアにおける人的ネットワークにも良い影響がもたらされることとなりました。
このほか、2月14日には北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所を訪問して農薬測定やOne Healthに関する知見を広げ、2月22日には北海道立衛生研究所を訪問するなど精力的に活動し、将来の共同研究の可能性に向けた人的交流を進めることができました。さらに、2月20日にはNaim博士による保健科学セミナー兼環境健康科学研究教育センター公開セミナーでマレーシアにおける農業従事者の農薬曝露実態調査に関して「Pesticide exposure and health effects in Malaysian farmers」として講演し、他部局の研究者や学生も聴講するなど、本学の複数部局への波及効果がありました。最後に修了証と記念バッジが渡されました。